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シュタイナーとワルドルフ学校について

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渡部まり子(翻訳者)


ルドルフ・シュタイナー

 ルドルフ・シュタイナーは1861年にオーストリアの田舎町に生まれ、1925年に亡くなりました。彼はカントを学び、ゲーテの書籍などをまとめたりし、さまざまな思想家、哲学者とも交流して、真理は神秘的直観、体験によってしか得られないという神秘主義の上に立つ、神智学を打ち立てました。
 シュタイナーは、ゲーテの権威であり、劇作家であり、オイリュトミーという運動芸術の発案者であり、哲学、神学、教育、農学、建築学、薬草学、薬学、医学、自然農法、共同体思想など、ありとあらゆる分野の専門家であり、また全部を繋げた人でもあります。この本で取り上げた幼児教育は、その巨大な氷山の一角といえます。


シュタイナー学校(ワルドルフ学校)

 シュタイナーは、人間は7年ごとの周期で大きく発達していくと言います。生まれてから永久歯の生えてくる7歳までが第一段階で、肉体の完成にあらゆるエネルギーを総動員しているときです。思春期の訪れる14歳までが第二段階で、エーテル体という、肉体に生命を注ぎこんでいる力の活躍する時期です。14歳から、人間としてすべての要素が整う21歳までが第三段階です。第二次性徴が訪れると、思考や想像力、判断力が目覚め、アストラル体が活躍を始めます。そして21歳に自我が目覚め、人間として完成します。シュタイナー学校のカリキュラムは、その人間の発達を待ち受けるかたちでつくられています。
 シュタイナー学校は、別名ワルドルフ学校と呼ばれますが、ドイツのシュツッツガルトで、1919年に初めてワルドルフ・アストリアという名前の煙草工場で働く人たちの子どもたちのためにモデル校をつくったところから始まったのがそのいわれです。
 最初の学校ができてから、現在では国境を越えて46ケ国に900以上もの学校ができるまでに発展しました。その他、とくにヨーロッパでは多くの公立校がシュタイナー学校のメソッドを取り入れています。


幼稚園

 幼稚園は年齢タテ割りで、知育をしません。子どもはまだお母さんのお腹の中にいるような気分で生きているので、部屋も子宮の中を思わせる淡いサーモンピンクのペンキで塗り、透きとおったカーテンで直射日光をさえぎり、夢の中のような雰囲気を保ちます。子どもはこの時期は理屈ではなく、模倣から物事を身につけて成長しますから、静かで、優しく、生き生きしたよい人間関係とリズムのある生活とよい環境を与えます。この年齢の子どもの生活半径は家庭にあるので、幼稚園も家庭的な雰囲気をつくって教師はお母さんやお父さんのような雰囲気で子どもに接します。幼稚園では教師は脇役です。


1年生から8年生まで

  • オリジナルのカリキュラム
  •  アメリカのシュタイナー学校では、小学校は1年生から8年生までで、つぎが高校で9年生から12年生までです。小学校は、教師は持ち上がりで、子どもの魂を育てます。この年齢の子どもたちは主に感覚を育てています。
     カリキュラムは、それぞれの教師が、どんな時代にどこでどんな子どもを相手に、また自分が誰であるかによって、発達段階などの基本線を保ちながら、独自のものをつくり上げます。また全教科にそれぞれ横のつながりをもたせると同時に、全体像がつかめて、子どもが今学んでいることや理由が無意識のうちに理解できるように配慮します。
     たとえば七歳の子は幼児からの転換期にいますから、まだおとぎ話の世界に住んでいます。ですから一年生は全教科が物語形式で導入されます。九歳は自分と他人が区別できるようになる年齢です。すると国語では人間のもっとも古い歴史と呼ばれる旧約聖書がテーマになります。手の仕事では自分と他人がぶつかるイメージのクロスステッチが入ってきますし、音楽では和音、輪唱などが出てきます。また全体と部分の例としては、算数の場合、足し算、引き算、割り算、掛け算の四体系全部が最初に物語形式で提示されてから、それぞれの体系に移っていきます。


  • メインレッスン形式の授業
  •  一日の初めは二時間弱、主要科目を集中して勉強します。とくに低学年は、歌をうたったり、詩を唱えたり、ゲームや劇などの芸術体験を通し、肉体の動き、心、頭を総動員してすべてを学び、最後に自分たちでその日に身につけたものを大きなノートに挿絵とともにまとめていき、それが教科書になります。
     教科は国語なら二〜三週間毎日ずっと国語ばかり学びます。つぎに国語は休んで、学んだことが消化するのを待ち、その間に算数に進むという具合です。主要教科のあとは手の仕事、二つの外国語、体育、オイリュトミーという運動芸術などが続きます。
     小学校に入ると子どもの中に記憶力が目覚め、言語を通して物事の意味が理解できるようになっていきますが、まだいろいろな判断力のもとをつくっている段階です。将来きれいなものと汚いものが区別できるように、美しい環境を用意し、人間の生き方を含め、子どもの人生のお手本になるような資料のみ使います。すべての教科を、人間がそれを初めて発見したときからの歴史を経験させることにより、自分の力で現在の発達までを全身で理解できるようにします。点数評価はありません。
     子どもと大人の境目である思春期は、人間の歴史でいえばルネッサンス、革命の時期です。その時期には、それに対応したカリキュラムをもってきます。変動期の歴史を自分がその時代の主人公になったようなかたちで学び、国語は喜劇と悲劇を交互に用意し、子どもの転換期を発散させます。この時期は、幼稚園で家庭が子どもの行動半径だったのが、学校という共同体にまで広がります。八年生まで、教師は生徒の前でしっかりした権威をもちます。


    9年生から12年生まで

  • 思考、想像力、判断力が目覚める高校時代
  •  高校になると、子どもにはついに本当の意味での思考力、想像力、判断力が芽生えますから、それからはすべての授業が思考を通して行われます。子どもの行動半径は地域社会にまで伸びます。人類の歴史を人の成長の中に見ると、幼児はまだおとぎ話や神話の時代に生きていますが、小学校で人類の太古の歴史からルネッサンスや革命時代まで行きつき、高校で現代社会までたどりつきます。子どもたちが見るもの、聞くもの、経験するものが血や肉で理解できるよう、さまざまな角度から物事を学びます。
     自分の育った環境と違う世界を経験するよう、障害者学校や施設や貧しい地域の託児所、その他工場などへ学校の教科の一つとして働きにいきます。社会科の授業では、息子は裁判所へ実際殺人事件の裁判をしているところを見に行きました。授業はほとんど考える授業で、討論の結果や研究成果をクラスで口頭で発表してから、挿絵付きのレポートにまとめるというスタイルが多くなります。
     10年生くらいになると、よその国のシュタイナー学校との交換留学が盛んに行われます。私の長男はドイツ、次男はフランスの学校に行きました。アフリカやオーストラリアなどに行く子もいます。そして11年生ごろから大学への進学準備に入ります。この時期の子どもは地域社会に住み、21歳までに現在の世の中に出て行く準備が整います。思春期から子どもの自立心が目覚めてきますから、親や教師はふたたび脇役に回ります。


    シュタイナー教育の目的

     学校教育で一番大切な部分は、子どもたちに人間とは何者か、なぜ自分は生きているのか、いったい自分はどこから来て、どこへ行くのか無意識のうちに感じさせることにあります。いわゆる教科は、生きるための手段であり、目的は別のところにあるのです。けれども人智学を教えてはいけないことになっています。
     シュタイナー教育は、全人教育であり、自由への教育ともいわれます。それは自分が好き勝手なことをするのではなく、いつも全体と部分、周りの世界に対する自分の立場を感じ取り、自分で温かい心をもって、正しい思考ができ、判断し、それを実行できるだけのあらゆる意味での基礎をつくることにあります。ですから教師が子どもたちにものを教えているときも、現在の子どもに語りかける部分、それからこれから成長させていく種をまいている部分の両方に気を配ります。教師が子どもに教えられるのは高校の卒業までで、その後はその基礎を経験とともに延ばしていってもらいたいからです。いつも目の前の子どもたちの二〇年後、三〇年後、そして年を取って死ぬまでのことを考慮に入れて基礎をつくっていきます。
     感情、知性、行動力のバランスがとれた自由人を育てることがシュタイナー教育の目的です。


    宗教について

     シュタイナーはキリスト教と関係があるのではないかとよくいわれます。確かに、かつてキリスト教の牧師がシュタイナーに教会のあり方をたずねたとき、本来の宗教のあり方について話しをし、それがもとになってクリスチャン・コミュニティ・チャーチというものができました。また学校でも旧約聖書を取り上げますし、神様ということばもときどき出てきます。
     けれども、本来シュタイナーは世界の宗教を一つにまとめた人です。人類の歴史の流れの中で、さまざまな民族がいろいろな宗教を生み出しましたが、それを否定してはいません。シュタイナー学校では子どもの生まれた国のお祭りや行事を祝いますし、いろいろな宗教の行事も取り上げます。
     だから神様、天使、マリア様などということばも、人間の私欲と結びついた、横道にそれたものでさえなければ、自分の宗教に置き換えて考えてかまわないのです。たとえば、日本のシュタイナー学校であれば、日本の昔からの行事を大切にし、日本の心を守ることが大切なことなのです。


    ワルドルフ学校の発展の仕方

     シュタイナー学校ができるときは普通、まず幼稚園が生まれ、そのうち一年生だけができ、毎年一学年ずつ増えていくという独特の発展の仕方をします。ちなみに私が子どもたちを通わせたシュタイナー学校は、ベルギーの学校が三年生まであり、アメリカのシカゴの学校が五年生まででしたが、私たちがニューヨークに引っ越すときには八年生までできていました。現在は高校まであります。ニューヨークの学校は、アメリカのシュタイナー学校の走りだったところですから、ナーサリー、幼稚園から12年生まであります。
     2004年現在、北米ワルドルフ学校協会の統計では、北アメリカにはさまざまな発達段階にあるシュタイナー学校が約160校あります。


    シュタイナーの共同体

     シュタイナーはあらゆる部門にまたがって活動し、芸術と教育と科学を結びつけた人です。そのため普通児の学校の近くには、障害者の村、自然農園、薬局などがあり、子どもが行き来できるようになっているところが多く、ニューヨークのグリーンメドウ・ワルドルフ学校、ペンシルベニアのキンバートン・ワルドルフ学校などがその例です。
     ニューヨークのグリーンメドウ・ワルドルフ学校の場合は、学校の隣にすぐフェローシップという、シュタイナー関係の引退者ホームがあり、農業、木工、手芸、印刷、蝋燭つくりなど、さまざまな活動をして暮らしています。週に一回喫茶店を出して、軽食、パン、お菓子などとともにいろいろな作品を売ります。オイリュトミーという運動芸術の学校、教師養成の大学、自然食の店、薬局、おもちゃ屋さん、それに小さな農場も同じ共同体の中にあります。
     ペンシルベニアのキンバートン・ワルドルフ学校の目の前は、巨大なバイオダイナミック、ヨーグルト農場と野菜農場です。野菜農場は、シーズンで予約をとり、その間好きなときに来て野菜をもいでいっていいのです。現在約200家族が登録しています。また車で30分以内のところに障害者コミュニティが三つあります。子どもたちは授業で、一緒に農作業をしたり、牛のお乳をしぼったりし、ほかの村にも訪問します。
     長男が高校時代の一部を過ごしたドイツのボッホムは、いわばシュタイナーの町で、シュタイナー学校も三つあり、シュタイナーの教会も病院もありました。
     そのように学校と並行して、シュタイナーの共同体も世界中あちこちに育っています。

    障害者のためのシュタイナー学校

     最後に、以前に少しふれた、キャンプヒル村のことについて付け加えさせていただきます。障害者が共同生活を行うところをキャンプヒル村といいますが、キンバートンには子どものためのビーバーラン、大学生以上の若者のための、キャンプヒル、ソルテイン、大人のためのキャンプヒル村、キンバートンヒルズの三つがあり、それぞれ約30〜40万坪の巨大な山に、小さなシュタイナー建築の家をあちこちに建てて、地上の楽園とでもいえるような美しい建物の中で平和な生活を行っています。
     入居者は家族のようなセッティングで、小さな家に五〜六人くらいの子どもや人が、ボランティアとともに家庭生活を行い、家事、農作業、動物や果樹園での仕事などをしています。子どもの村には学校、青少年の村には大学がついていて、家からコミュニティの真ん中にある学校に通います。クラフトの家、アートの家、オイリュトミーのホール、医療やマッサージのための家もあります。ちなみに北米では、そんなキャンプヒル村が七ケ所にあり、世界中からボランティアを受け付けています。

     
         

    7歳までのシュタイナー教育「虹の彼方からきた子どもたち」。学陽書房より平成16年10月15日全国の書店で発売。
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