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シュタイナー教育書『虹の彼方からきた子どもたち』について

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全ての子どもは、あなたを親として選び、虹の橋を渡ってやってきたのです。幸せで、元気いっぱいで、賢い子どもに育ててあげたい。親のためのシュタイナー教育書「虹の彼方からきた子どもたち」。


バーバラ先生の勉強会へようこそ

渡部まり子(翻訳者)

春一番に咲くクロッカスやヒヤシンスのような花もあれば、盛りに咲きそろう花もある、秋になるまでずっと待っていて咲く菊、桔梗。人知れずひっそりと咲き、ふと人の心を和ませる野の草もあれば、バラのように得意になって人の目にとびこんでくる花もある。さて、どの花が一番偉いでしょう。誰によい点をあげますか。

人も全員が同じ花ではありませんね。一人ひとりの子どもの個性を大切にしながら、発達に応じて明るい部分を伸ばし、将来生きる道や、その子のミッションをみつけるのを手伝うのが教師であり、親ではないでしょうか……。

シュタイナー教育は、個性を認め、心、身体、頭脳のバランスがとれ、自立した子どもを育てようとする全人教育ですが、その始まりが幼稚園で、この本では生まれてから七歳までの子どもの育て方を紹介しています。

シュタイナーの幼児教育に関しては日本でもいろいろな本が出版されています。けれども、なかなか具体的に書かれている本で、これが正しいと思われるものをみつけるのは難しく、その根本思想を説明する本は、はじめての方には難しすぎるという問題があります。

この本は、シュタイナーの教育理念を深く理解し、実践してるバーバラ・J・パターソンが、シュタイナー教育ははじめてという父母のために、四週連続で行った子どもの育て方に関する勉強会がもとになっています。バーバラの幼稚園に子どもを通わせていた、作家のパメラ・ブラドレーが、勉強会での話をテープにとって書き起こし、その後バーバラ自身が四年の月日をかけてリサーチしなおして完成させました。そのため、シュタイナーの幼児教育について、その根本思想と具体的な実行法が幼稚園と家庭の両方のサイドから、とても正確に、しかもわかりやすく説明されています。


私自身も、この幼稚園にアシスタントとしてかかわりました。

バーバラの幼稚園は、それは静かで、明るく、平和な幼稚園でした。子どもたちがあまりに素直でいきいきしていたので、参観した親や教師たちからいつも、はじめからよい子ばかりが集まったのでしょう、と聞かれました。教師は声をはり上げることもなく子どもたちが遊んでいるときはおもちゃをつくろったりして、いわゆるお母さんと子どもの平和な家庭を再現するようなものだったのです。
 けれども実際は、毎年九月、幼稚園が始まるときには、ほかの子と行動を共にできない子、人の顔を見たら殴ったり、おもちゃを取り上げたりする子、英語がよくわからない子、日本人の子も一人いて、まあ小さなバーバラの幼稚園によくこんなにさまざまな子どもたちが集まったと思うような状態だったのです。

それが幼稚園が始まって3カ月もたつと、たいてい全員が天使のようにやさしく、素直な子に変貌していったのです。  
 幼稚園でのバーバラの子どもたちへの教育自体が素晴らしいものでしたが、それを助けたのが定期的に行われた父母教育でした。父母の協力なしには、そこまでよい幼稚園をつくり上げることはできなかったでしょう。シュタイナー教育は、どこまで父母の協力が得られるかが鍵になります。バーバラの幼稚園もその例にもれず、父母との共同作業によって素晴らしい幼稚園が築かれていきました。
 バーバラの幼稚園は、私が知っているベルギーの幼稚園やニューヨークの幼稚園などとも少しずつ違います。本来シュタイナー教育とは、根本的な部分を除き、いつ、どこで、誰が、どんな子どもを扱っているかで表面は違ってくるべきものなのです。でもよいシュタイナー幼稚園で共通しているのは、子どもの発達段階をよく理解したカリキュラムが組まれ、静かで温かい、家庭的な環境が用意されているところです。バーバラの幼稚園は、シュタイナー幼稚園の中でもシュタイナーの思想がかなり正確に反映された、素晴らしい幼稚園の一つに数えられ、模範校とされてきました。

バーバラとシュタイナー教育とのかかわりは、このあと第1章で彼女自身の口から語られますが、南カリフォルニア・シュタイナー学校教師養成学校を卒業後、ロサンゼルスのハイランドホール・ワルドルフ学校付属幼稚園の教師を経て、シカゴで自宅を使った幼稚園を始めました。そこでこの本が生まれました。その後も各地の幼稚園教師や、教師養成プログラムにかかわり、現在はミシガンのシュタイナー小学校で、先天的、後天的な理由で普通のクラスについていけない子どもたちの指導にあたっています。

私とシュタイナー学校との出会いは、ベルギーで暮らしていた一九八一年でした。六歳を頭に3人の子どもたちのために見つけてきたのがシュタイナー学校だったのです。子どもを通して私自身もシュタイナーの思想を学ぶようになり、シカゴに移ってからは、シカゴ・ワルドルフ小学校で編み物、刺繍、縫い物、フェルトなどの手芸クラスのアシスタントをしていました。そのころ、バーバラが自宅で幼稚園を始めるので手伝ってもらえないかと誘われたのをきっかけに、それ以来、バーバラとともに保育にたずさわり、父母会、勉強会にも同席しました。1987年のことです。二年後、私がニューヨークに移るころには、バーバラの幼稚園は大変な人気で、3年後まで入園予約が一杯でした。

ニューヨークで正式にシュタイナー学校教育の修士課程を修了したころ、バーバラから「本を出版したのよ」と聞き、そのときからいつかはそれを日本語に翻訳したいとは思っていました。けれども私がバーバラの本をどうしても訳さなければと思うようになったのは、子どもをシュタイナー学校に通わせた親として、またその後は、アメリカのあちこちのシュタイナー学校の教師として、シュタイナーにどっぷり漬かった20年を経た後、あるきっかけから、別の方法を使った特殊学校の教師を経験したことにあります。自閉症(オーティズム)、ダウン症など、さまざまな理由で普通児の学校では無理と医師に判断された子どもが通う学校ですが、そこに一年間働いてみて、テレビやコンピューターに翻弄されて戸惑う子どもたちを目の当たりにし、子どもが何者かも知らず、発達段階もわからない親や教師たちが子どもを扱う恐ろしさを身にしみて感じたからです。

本来の家庭環境におかれることなく、アニメのヒーローの真似を繰り返しては大怪我をしたり、情緒不安定になっていく子どもたち。大人の間違った対応で成長をはばまれ、おかしくなっていく抵抗のできない子どもたちを見ていられませんでした。症状の軽い子なら、学校に入ってきたときの姿はバーバラの幼稚園の子どもと極端な差はなかったのに、半年後、一年後の姿は私の目から見て天国と地獄でした。シュタイナー校でそういう子どもたちを扱う場合、まったく違う方法をとります。同じ子どもたちがこんな扱いを受けるなんて……。
 その学校を辞めるとすぐ、私はバーバラ先生の本の翻訳を始めました。

現在の主な国の主流教育は、まず就職、有名大学という学校教育の終着駅からはしごを下ろし、逆算してつくり上げられたような教育理念とカリキュラムで運営されており、知育偏重のアンバランスなもので、子どもは良くも悪しくも単なる小さな大人と見られています。そのうえ、人類がいまだかつて経験したことのない国際化、情報化時代を迎えて、その加速度のついた急激な変化に教育がおいつけない状況にあります。メディアという近代兵器の下に抵抗のできない子どもたちが、これまでの人間の育ち方とまったく違った道を歩みはじめました。

今この時代、幼い時からハイテクを使った「進んだ」教育をするか、人間を自然の一部としてもう一度根本的に見直すか、両極端に意見が分かれています。シュタイナー教育は、世界が一つになり、情報時代の未来に生きる子どもの教育だからこそ、あえてハイテクは幼いうちは遠ざけます。一見時代に逆行しているように見えながら、実は新しい時代の全人教育なのです。つめこみではなく、人間の発達に合わせてまずゆっくりと器をつくり、子どもの意志でその器をみたしていく教育です。ビニールハウスで育つ野菜。化学肥料で育つ見せかけだけの季節外れの花。自然の一部であるはずの人間までをも人工的に育てようとする時代、もう一度人間とは本来何ものなのか、子どもはどう育てるべきか考えてみようではありませんか。

どの時代のどんな環境の中でも大きな世の中の流れと自分の立場を見極め、よい世の中と個人の幸せを築き上げられるような、末広がりで基礎のしっかりした子どもたちを育てるためにはどうしたらよいのでしょう。
 シュタイナー幼稚園に子どもを入れることのできないお父様、お母様たちにも、バーバラの幼稚園の勉強会にこの本を通して出席していただき、なんらかのかたちでお役に立てることを願っております。
 バーバラ先生の勉強会へようこそ!

末筆になりましたが、私の大学時代からの親友、野下理子さんが挿絵を引き受けてくださったこと、本当に嬉しく思います。以前から、理子さんの挿絵でいつか本を書くのが夢だったのです。また編集の星野智恵子さんをはじめ、学陽書房の根津佳奈子さんやスタッフの方たちの会社ぐるみの応援があり、初めてこの本の出版が可能となりました。日本語版の出版を楽しみに、いろいろ助言し、温かく見守ってくださった著者のバーバラ・パターソンさん、日本や海外に住む子どもたち、家族、友人の励ましに対してもここに心よりの感謝の気持ちを記したいと思います。

2004年9月

 

     

7歳までのシュタイナー教育「虹の彼方からきた子どもたち」。学陽書房より平成16年10月15日全国の書店で発売。
このサイトでご注文を受け付けています。

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